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犬のアレルギー性皮膚炎 |

犬の皮膚炎:原因を知ることが大切!! |
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●ワンちゃんの皮膚炎(かゆみ)の原因は、大きく3つに分かれます。 @外部寄生虫(ノミ・マダニ・疥癬ダニなど)によるもの Aカビや細菌の感染によるもの Bアレルギーによるもの です。 ●それぞれの原因が、単独・あるいは重複してワンちゃんの皮膚に炎症を起こし、かゆみの原因となります。 ●原因が違えば、当然治療も異なります。だjから、原因を確認するのは、適切な治療をするために必須です。 ●また、重複したり、慢性化している場合は、1次的原因と2次原因(感染)を鑑別しコントロールしていく必要があります。
ですから、段階を追って検査と治療を続ける必要があります。
(この記事は、プリモ動物病院の川野 浩志先生の H23年学際企画セミナーの資料をもとに記述させていただいています。) |

【1】感染をコントロールする |
@外部寄生虫を退治する |
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●ワンちゃんの皮膚には、ノミやマダニといった眼に見える大きさの寄生虫のほか、疥癬、アカルス(毛包虫)のように、顕微鏡で探さないと見えない小さなダニも寄生します。 ●いずれも、検査や、時によっては試験的に駆虫薬を投与することで、確認し、寄生虫が原因と分かれば、ほとんどの場合、確実に治療することができます。 ●かゆい皮膚の治療では、まず、この外部寄生虫を確認し除外することから始まります。
(ただし、アカルス(毛包虫)は、様々な原因の免疫力の低下に関連することが多く、特に高齢になってからの発症は、完治が難しいことがあります。しかし、その場合もコントロールは可能です) |
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A細菌やカビによる感染を確認し、止める |
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●弱くなった皮膚には、細菌(ブドウ球菌など)や、カビ(マラセチアなど)が増え、感染を起こします。 ●病原体単独で悪さをすることもあれば、アレルギー性皮膚炎の2次感染で増殖し、その刺激でさらに炎症を悪化させ、かゆみも増幅します。 ●細菌もカビも、それとわかかれば、それぞれにあった抗生物質や抗真菌剤で治療することができます。
適切な治療のためには、まず今、皮膚で何が増えているか知ることが大切です。 そのために、皮膚をかきとったり、テープを張り付けて顕微鏡で確認します。 |
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シャンプーは大切!!・・<正しいシャンプー治療の仕方>・・ |
●皮膚炎の治療の時に、飼い主様に必ずお願いするのがお家でのシャンプーです。 ●シャンプーは細菌やカビでも、アレルギー性皮膚炎の時も大切な治療の柱の一つです。
●シャンプーは、病原体・汚れ・アレルゲン、さらに余計な皮脂を落とし、それらを餌に増える細菌やカビを増えにくくするための大切な治療の一環です。 ●ただし、効果を上げるためには、その子の肌の状況に合わせた適切な薬用のシャンプーを選び、次にあげる「正しいシャンプーの仕方」で使用し、必要な回数(通常、週2〜3回)行うことが重要です。
<治療時の正しいシャンプーの仕方> ★シャンプー前に出来るだけ、短く毛を刈っておく。シャンプーも浸透しやすく、乾かすのも楽。 ★必ず処方された「薬用シャンプー」を使ってください。市販のシャンプーでは却って悪化します。
@湯の温度はぬるめ(30℃位)。暖かいとかゆみが強くなる。 A3度洗い・・・(1)まずしっかり水洗い (2)シャンプー1回目 ⇒しっかり洗い流す (一回目は泡立たないことが多い) (3)シャンプー2回目:10分置く⇒しっかり洗い流す *脂漏症が強ければ先にクレンジングすることもある Bタオルドライか、冷風ドライヤーあるいは低温風で (温風はかゆみが増す) C保湿 :特に乾燥肌や、脱脂力の強いシャンプーの後は、しっかり保湿する |

B2週間後にチェック |
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〇正しく治療できていれば、この時点で、 @外部寄生虫 A細菌・カビの2次感染 は落ち着いているはずです。
〇この時点でまだ、かゆみがあれば、それは「アレルギー」によるかゆみと判断できます。
◎次に、アレルギーの原因を分類して、対策を考える必要が出てきます。 アレルギーの原因には、大きく2つ: @食物アレルゲン A環境アレルゲン があります。 この2つは、対策が大きく異なるので、しっかり見分けたい項目です。 |
【2】アレルギーの原因を探る |
@アレルギーの原因は食べ物か? 環境アレルゲン(アトピー)か? |
◎皮膚アレルギーの原因物質には、食物によるものと、環境によるものとあります。
◎皮膚アレルギーの発生経路は、IgEという抗体の関連する T型と、 リンパ球が関連する W型の、2つの経路があります。
T型は、すぐに激しい反応を示します。 W型は、時間がたってから反応が現れます。 環境のアレルギー(アトピー)は、すべてT型でIgE関連です。 IgEは、これまでもいくつかの検査機関で検査が可能でしたから、すでにどこかで検査された方もいらっしゃるでしょう。
しかし、食物のアレルギーは、T型とW型が混在し、これまで非常に分かりにくかったのです。 IgE抗体検査で調べて陰性であっても、食べるとかゆくなる、ということがよく起きていました。
しかし、リンパ球の反応に関しては、これまで検査が不可能だったため、食べ物のアレルギーを疑う場合、「除去食試験」をするしかできませんでした。 これは、出来る限り、抗原になりそうなたんぱく質の種類を減らしたり、目新しいたんぱく質を使ったり、たんぱく質を分解してペプチドまで分解した加水分解食といった、食物アレルギーの出にくい制限食を食べ続け、それで皮膚炎が落ち着くかどうかを見る検査です。
しかし、原因物質が分からないまま、適当と思われるフードを1つづつ、2か月の間ずつ食べ続け、その結果で判断するという時間と根気とコストのかかる検査ですから、結果が出る前に挫折することが多かったのも事実です。 更に都合の悪いことに、食物アレルギーの多くは、W型のリンパ球関連する反応で、加水分解した蛋白にも反応してしまうため、加水分食での除去食試験でかゆみが消えないとき、判断がとても難しくなっていました。
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A新しいアレルギー検査 |
そこで、「動物アレルギー検査株式会社」(リンクご参照)というところが、W型のアレルギー反応を検出できる「リンパ球反応検査」を開発し、我々の病院でも利用できるようになりました。
この検査を利用することで、長期間の除去食試験をすることなく、血液をとるだけで、すぐに、アレルギーの原因物質と反応パタンを知ることができるようになり、アレルギー性皮膚炎で悩むワンちゃんに、早期から、適切な対策を取ることが可能になりました。 また、IgE検査もこれまでの定性(陽性か陰性か)検査でなく、定量(何%か)で表示され、より対応がしやすくなっています。 |

B 検査結果でアレルギー陽性だったら、どうするか? |
@食物アレルギーだったら: ⇒アレルギーを起こすものを食べない!!:これにつきます。 主原料だけでなく、添加されている油の原料までチェックします。 通常の病院用療法食で該当するフードがなければ、市販のプレミアムフードから探します。 そのために、何に対してアレルギーを起こすか、だけでなく、 何だったら大丈夫か、といった異なる視点での検査が必要です。
A環境のアレルギー(アトピー)だったら:・・・・ちょっと大変です。 ●避けられるものは避ける、 (掃除・防ダニ布団・空気清浄機・床をフローリング化・アレルギースーツを着て外出する・・・)
●避けられないものは、以下の5つの治療の中から選択します。 (1)ステロイド (2)シクロスポリン (3)インターフェロン (4)減感作 (5)漢方
それぞれ長所短所がありますが、対症療法でなく根本的治療といわれるのは(4)の減感作療法のみと言われます。 ステロイドは短期間だと大変よくききますし経費も余りかかりません。アトピーのかゆみに現在もっとも使用されている薬です。 しかし、長期使用となるとご存じのとおり、多くの副作用が心配となるため、必要最小限の使用にとどめたい薬です。
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C 減感作療法のススメ |
環境アレルゲンに対するアレルギー(アトピー)と分かった場合の5つの対処のうち 根治につながる可能性のあるのは、減感作療法です。 これは、その子の反応するアレルゲンを集めて、皮下注射や舌下に繰り返し投与し、 アレルギー反応自体を起こしにくくする治療です。
なぜ、アレルギー反応が起こりにくくなるかの詳しい過程はまだはっきりとわかっていないようですが、 Th1に傾いた免疫反応のバランスをTh2の側に押し戻すといわれています。 治癒の確率60〜80%で、若い時に始めるほうが効果が出やすく、年齢が進むと反応が悪くなります。 初期、アレルゲンを決めるための検査や、その子のための抗原を海外に発注して作ってもらうため、 特に始めのうちは、手間やコストがかかりますが、維持期に入れば月一回の接種で済み、しかも、ほかの投薬が不必要となる場合もあるため、長期的にはコストパフォーマンスに優れています。 最初の導入時期が大変ですが、これも最近、急速減感作療法といって、最初の一カ月分を1日で行う方法なども検討され、これが可能な子は、大変楽に減感作療法に入ることができるようです。 なお、詳しい検査や治療の方法は、病院で診察・ご相談の上で決めていきます。 |

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検査をして皮膚炎の原因を見つけ、適切に治療することで、 ワンちゃんをつらいかゆみから解放してあげましょう! |

(追加1)クロスリアクション |
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アレルギーの反応は、基本的にこれまで接触したものに対する過剰な免疫反応ですが、 一度も接触したことのないものでも、反応することがあります。 これを、クロスリアクションといい、抗原の形が似ているために起こります。 (詳細は、スポットテストという減感作治療のためのIgE抗原の検査をしている スペクトラムラボ・ジャパン(リンクご参照)という会社の資料をご覧ください。)
アレルギーが確認されたワンちゃんは、当該抗原だけでなく、クロスリアクションを起こす物を避ける(触れるのも食べるのも)よう、注意が必要です。 |

(追加2)アトピーの子はカサカサ肌! |
アトピーのワンちゃんの皮膚は、セラミドなどの皮膚の保湿成分が 先天的に不足していることが分かっています。 このため、皮膚のバリアが不十分で、アレルゲンや病原体が簡単に皮膚に 侵入し、病状をどんどん悪化させます。 セラミドは、つけても食べても皮膚に到達できるので、 いろいろな方法でセラミドを補うことが大切です。 スフィンゴシンもセラミドとおなじように皮膚を守ります。
右の写真は、様々なタイプのお薦め保湿剤です。 乾燥の激しい子は、飲み薬とつける薬の併用がお勧めです。 |
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